※インタビュー記事(聞き手:庄島瑞恵)
エネルギー・環境問題を正面からとらえ、持続可能な社会を実現させる
防災用ポータブル蓄電池 株式会社KMTec HPより
経営者としてSDGsを考えてみよう
令和4年1月、脱炭素経営セミナーの事例見学会が開催され、脱炭素経営に先進的に取り組む企業の事例としてKMTecの事例発表が行われました。
「ゼロカーボンシティさがし」の提唱にマッチした様々な取り組みを実践しているKMTecは、2006年、佐賀大学発ベンチャー4社目として設立された会社で、代表取締役の久米祐介さんがゼロから築いてきた蓄電池メーカー。エネルギーや環境問題を正面からとらえ、持続可能な社会を実現するために、未来の子ども達のためにできることを考え、挑戦し続けています。「あったらいいなと思えるドラえもんみたいな何かを、人々の生活、命を守るために技術開発に取り組んでいます」と久米社長。マンションの1室から始めた会社も、今や佐賀市日の出に会社を構え、福岡営業所も開設しました。
事例発表では、久米社長が発表を行い、社内での脱炭素にまつわる取り組みと並行してSDGsの17の目標と照らし合わせながら実践内容が紹介されました。久米社長は「SDGsは国連が掲げた目標です。私はこの目標は人のための定義だと解釈しています。この目標には動物のことが抜けていると個人的には思っています。17の目標の1~7は社会に関する目標、7~12は経済に関する目標、13~15は環境に関する目標、そして16と17は平等、連携に関することです。通常は1~15に該当すると思います」と解説。民間の経営者の立場でSDGsを考えて話が進められました。SDGsの取り組みをネームバリューのために行うのか、新しいビジネスの達成にために実践するのか。世界の情勢から鑑みると、SDGsが目指すのは、世界が直面している課題の解決です。したがって、企業がこの問題解決に取り組むことによって、新しいビジネスチャンスにつながることが多いと言えます。ということは、課題に目を向け解決のために動けば、必然的にチャンスをものにしていることになります。これからの企業経営はSDGsと共に成長を目指していくべきで、経営層や幹部だけが知っていればいいのではなく、全社的に浸透させることが必要不可欠です。社員全員に共感させていくことが大事になってきます。
無理なくできることを継続し習慣化させること
今回でのセミナーで久米社長は「企業としてSDGsを掲げたら、実践あるのみ。見せかけではなく企業の特質に合わせて目標を掲げて皆で結果を出す努力をしていきましょう」と提言しています。実際に会社で実践している例を挙げてもらいました。
KMTecでの取り組み
・自社開発の省エネ照明、LED照明の導入
省エネルギー化を図り 照明、空調、断熱の交換を行った
・太陽光パネルの設置
現在テストで太陽光エネルギーハウスを実験中
ゆくゆくは女子社員の休憩・更衣室に利用予定
・断熱材の導入
・社用車のハイブリッド化、EV化
社用車をハイブリット車にし、EV車を優先して購入するようにしている。
現在:6台中 ハイブリッド車4台、EV車1台、軽バン 1台
→エネルギーをなくすことは環境負荷軽減につながる。CO2の削減も実現
・通勤の公共交通機関及び徒歩推奨
通勤手当は距離に応じて支給
徒歩通勤でも関係なく支給している。→徒歩で健康増進と所得アップにつながるメリットが
・不在配達防止のために会社での個人受け取り推奨
佐賀県が推奨するクールチョイスSAGA再配達削減プロジェクトに賛同し、社員の荷物受け取りを会社でできるようにした
・ノー残業、土日曜、祝日は休業
業務効率の改善と一人当たりの生産量を上げる努力を行う
・ペーパーレスの取り組み
クラウド化を推進し、ペーパーレス化が実現。会議時はパソコン上で発表。勤怠もクラウドを利用
今後実践していく目標
・マイボトル推奨
マイボトルで通勤、業務使用の場合に支給
・お弁当持参の推奨
弁当を月10日以上持参した場合は支給
・エコカー・エコバイクなどの充電スタンドを社内整備
太陽光から直接充電ができるスタンドの開発
会社で充電できることで、自宅充電の充電負荷軽減ができ実質給与がアップ
脱炭素の取り組みはSDGsの実践とつながっている
一つ一つは小さなことでも、継続することで省エネや脱炭素につながっています。「古い照明を新しいものに変える、昔のエアコンを今のエアコンに変えるだけでも消費電力に大きな違いが出てきます。電気の消し忘れをなくすだけも違います。世界を変えなくてもいいんです。無駄をなくして、ちょっと気にかけて、小さなことを積み重ねていくことが大切だと思っています。」と久米社長。会社で実際に取り組んでいるスタッフの平石小春さんは「普段はSDGsとか意識せずに過ごしていましたが、会社で実践している取り組みが省エネや脱炭素に貢献しているのだと実感できました。会社の提唱だけでなく、自分たちも主導して動いていきたいと思います」と話してくれました。
世界が抱える問題、課題に背を向けての企業経営はもはや成立しないといっても過言ではない時代。全社を挙げてSDGsの課題に目を向け、脱炭素社会を目指していくことが、20年、50年、100年先の未来につながっていくはずです。持続可能な企業になるのは何をすべきか? 「〇〇をしなければいけない」と義務的に考えるのはなく、明るい未来を想像しながら楽しく継続できる小さな一歩から何かが変わっていくかもしれません。