※インタビュー記事(聞き手:庄島瑞恵)

佐賀の土地柄を活かして社屋のZEB化を整備中 モデルプランを構築し、地域に展開し、地域のゼロカーボン化の牽引を視野に

地中熱を利用した空調システムや管渠布設工事などの分野で実績を伸ばしている株式会社バイオテックスでは、現在、社屋のZEB化に向けて地中熱利用空調システムや自家消費型太陽光発電システムなどの導入が進められています。佐賀の特性を活かした取り組みや今後の展望などについてお話してもらいました。

ZEB化に向けて着実に進行中。みんなで同じゴールへ向かって

2025年ZEB化達成に向けて目下進行中の事務所と社内ジム。照明は100%LED化を目指しており、すでに一部LEDの切り替えが終わっています。今後は補助金のタイミングを見計らって全て切り替える予定とのことです。コストがかかることなので、公的な補助金の活用は企業にとっては頼みの綱です。活用しない手はないでしょう。 「社用車に関しては、現在、FCV2台、EV3台、PHV1台、そして自転車を7台導入していて、建設部門の脱炭素化を実現するため、社用車にテスラのサイバートラックを導入したいのですが、今は順番を待っている状態です。照明については、LED化のほかに電気の無駄をなくすために人感センサーやタイマーで無駄な電気の使用を抑制しています。」(原田社長)

農業県佐賀ならではの地中熱空調計画

CO2排出量削減に有効な地中熱利用空調システム導入にはコストの課題がつきものです。一番費用がかかるのは掘削のところで、この課題を解決できる妙案が「佐賀の地盤」にありました。

「佐賀平野の軟弱な地盤は掘削に適しているため、費用を抑えることができるという利点があります。地中熱利用のためには面積が必要で、面積が足りなかったら下へ下へと掘っていくため、それにコストがかかってしまいます。ですが、横に掘ることでコストが3分の1ほどに減るので、会社に隣接している田んぼに地中熱交換機を埋設してコストを軽減することを思いつき、関係先に土地購入を相談したところ、農地の地下を借りたらどうかという提案をもらいました。地中シェアリングという発想は広大な農地がある佐賀にはとても適しているんです。農家さんは農地の影響を受けずに賃料が入り、借りる側は導入コストを抑えることができるという双方にとってウィンウィンの仕組みがつくれます。佐賀ならではの構想としてこれからも現実的に進めていきたいと考えています。」(原田社長)

実際にコスト削減の研究のために清掃工場の敷地を使って実験を行い、大学とは共同で熱交換器の性能評価についての研究を行っています。脱炭素化を広げていくために有益な情報の蓄積と実用に向けた実験や研究が進められています。

不快指数を示して数値基準で空調のオンオフをコントロール

不快指数を表示した掲示物

会社での空調設定については、暑さ、寒さの感じ方に個人差があるために社内で基準を設ける際には落としどころが難しいと感じている担当の方もいるかもしれません。納得のいく基準設定で社員のモチベーションを下げずに省エネを進めることができるのが理想ですが、こちらの会社では数値で見える化して空調の調整を行っています。

「弊社で空調設備を運用する時は、社内で運転を統一するために不快指数に合わせて稼働させるようにしています。温度だけでなく湿度も運用の基準として出し、不快指数の範囲になったら運転をしようという取り組みです。省エネで一番効果があるのは、運用のしかたを変えることらしいですね。社員もだいぶ慣れてくれたと思いますよ。時々、不快指数になった途端に冷房を入れてすぐに窓を閉めるから、暑いからすぐに閉めるのはやめてくれーと思っています(笑)」(原田社長)

佐賀の産業と結び付けて省エネ産業を創造

まだ構想段階の話ですが、地中熱利用の空調設備に使う放熱器に佐賀の伝統産業「有田焼」を採用した開発の話が動き出しているそうです。有田焼は硬くて丈夫な磁器で、意匠性にも優れていることから、この特性を活かしてZEB化に取り入れるアイデアが生まれました。

「この構想のきっかけはフィンランドへ視察研修に行ったときのことでした。昼食時に寄ったレストランに陶器の空調設備があったんです。焼き物の壁みたいなデザインで、1つの暖炉で4か所を暖める仕組みになっていました。まさにローテクですね。この設備をヒントに、佐賀のものを使ってやるには「有田焼」で放熱器を開発したらいいと思いました。帰国後、佐賀県窯業技術センターに相談して、すごく硬い磁器を開発されている窯元さんを紹介していただきました。有田焼の産地から「放熱器」という新しい商品が産業として生まれて、地域全体でムーブメントを起こしてほしいという思いを持っています。」(原田社長)  400年以上の歴史を持つ有田焼の産地から「放熱器」という新しい産業が生まれたら…。特定の企業による大量生産ではなく、業界全体の取り組みとして新たな取り組みにチャレンジすることができたら、地域産業の振興に大きく寄与できるはずです。今、その可能性を模索しているところだそうです。

目指せ! 地中熱利用促進
目指せ! ネット・ゼロ・エネルギー・ビル

カーボンニュートラルに携わる企業として佐賀で率先してZEB化に着手し、着実に脱炭素化が進んでいます。業務においても地中熱利用を促進して、省エネルギー化を後押ししています。

「有田焼を使った放熱器の開発は、実現可能性がどれくらい評価されるか分かりませんが、賛同してくれる人が参加してくれたらうれしいです。

2025年までにカーボンニュートラルを目指しているフィンランドの人口密度は、佐賀の20分の1です。100haあたり16人、佐賀は320人です。100haに16人だったらもともとカーボンゼロなんじゃないかっていうくらい低いですね。そう考えると日本でカーボンニュートラルを早期達成できるのは、すごく田舎だろうなと思います。弊社としては自社のZEB化はもちろんのこと、地域のゼロカーボン化にも貢献していきたいです。」(原田社長)

佐賀はカーボンニュートラルの早期達成の可能性が大きい!?そんな可能性を秘めている佐賀のカーボンニュートラル化を支える企業の一つがこの会社です。自社のZEB化が達成できたら、実践例がそのままモデルケースとなり、地域のZEB化促進に大いに役立つことでしょう。