※インタビュー記事(聞き手:庄島瑞恵)

SDGsの意識を学内で浸透させるため学外の団体や企業と連携
「自分ごと化」して体現できる人材育成を

西九州大学短期大学部(佐賀市神園)では、カリキュラムの中にSDGsについて学ぶ時間を設けて、幅広い視野を持ち、インプットしたことを活かして実践できるような人材育成に努めています。先行き不透明な世界情勢の中をしなやかに生き抜く人間力を養う学びの場を創り出しているお二人に話をお伺いしました。

ペットボトル回収や空調温度の調整など

日頃から学内でSDGsを実践

プラスティックキャップ回収
太陽光発電モニター

昭和21年9月、佐賀栄養専門学院を創設、「世界文化の向上と人類福祉に寄与する人物の養成」を掲げて、佐賀の教育シーンを支えてきた学びのオアシス西九州大学短期大学部。開学して80年近くの年月を重ねた現在も、「主体的・自律的に行動できる確かな人間力」「教養ある専門職業人としての基礎力」「社会人としての汎用性能力」を到達目標として可能性に満ち溢れた卒業生を送り出しています。

このキャンパスでは世界情勢をタイムリーに読み取り、省エネやCO2削減にも早い時期から着手し、学内にある3号館の屋上には発電パネルを設置して発電を行っています。玄関ホールには、発電量や使用した電力量、日射強度や月ごとの発電情報などがモニター表示で誰でもわかるように開示されています。また、教室の空調設備についても学校独自で設定温度を決めて省エネを図っています。

新型コロナの影響を受けてからは、神埼市と小城市にあるキャンパス間の全体会議でもオンラインでの会議が通例となり、ガソリン代の削減、旅費交通費の節約にもつながっています。

学生を巻き込んだペットボトルキャップ・コンタクトレンズケースの回収運動も継続的に行われており、2022年にはポリオワクチン約18人分に相当する70㎏のキャップ回収を達成し、SDGsの意識が学内でも浸透している様子が伺えます。

「LED化も進めているところで大半がLEDに変わりました。学校で一番多い資源ごみはなんといっても紙ですよね。ペーパーレスに取り組んだことで、紙の廃棄量を大きく削減でき、シュレッダーを使う回数が減りました」。(福元先生)

外部の専門家に講義を依頼。より実践的な学びを得る機会に

SDGsの取り組みを継続している中、令和2年度からはSDGsとデータサイエンスを取り入れた授業をカリキュラムに組み、時代に即した教育を実践しています。その一事例として学外の企業や団体と連携して、現場でSDGsに関連した職務に携わる専門家に協力を仰いで授業が行われています。

「SDGs入門と実践の授業で、多文化共生とSDGsをテーマに授業を展開しました。対象学生は1年生で、前期が座学、後期を活動にして授業を行いました。この授業以外にもSDGsに詳しい先生方も授業で取り入れています。」(平田先生)

令和4年度に実施された日本キリバス協会代表理事 ケンタロ・オノ氏による講義は、気候変動問題を主軸にSDGsの視点から地球温暖化の影響を最前線で受けている「キリバス共和国」の話を紹介。海の影響や人々の暮らしなど、グローバルな視点から佐賀に住む私たちとリンク付け、脱炭素社会の重要性を認識させるのが狙いでした。気候変動によってキリバスで抱えることになった諸問題(フードロス、教育、水生生物、食糧危機、不平等)や予測される問題(国の存亡、人が住めなくなる、水や食料)について知り、自分たちでできることがないかを導き出し、学生は多くの気づきを得ました。

もう一つの講義は、佐賀県地球温暖化防止活動推進センターのスタッフが講師となり、カーボンニュートラル達成に向けた動きと身近な取組例についての紹介を現場サイドの目線から行いました。紹介例に大学生の環境活動を取り上げることで、環境活動に対する関心度アップと活動への参加を促しました。

2つの講義を通して、受講した学生の考察を集めたところ、通常の講義では得難い刺激を受けた学生もいたようで、有意義な内容の回答が多々寄せられました。

「動画や実際の様子を知ることによって、通常の講義形式よりも深く理解することができたと思います。学生たちは、自分たちでできることが見つかったのではないかと思います」。(平田先生)

地域との連携を大切に 学生たちの自発力を育てていきたい

SGDsが日常的に取り沙汰されるよりも前から環境問題と向き合い、解決・実践できることに取り組んできた西九州大学短期大学部。今後も地域連携を念頭に置き、地域や企業、団体からの様々な声に耳を傾け、学生の成長のために力を注いでいきたいと指導陣はサポート体制を整えています。その先導者の一人でもある平田先生が描く図は、学生たちが自発的に考え、行動を起こすことです。

「今は、学校側がサポートしながら学生がそれについてくるケースが多いですが、SDGsの意識がしっかりと根付いた暁には、学生が自発的にアクションを起こしてくれると願っています。そのためにも、学生と一緒に何かやってみよう、こういうことを伝えたい、などアイデアや提案があったらぜひご一報ください。

ある学生が今回の授業の感想で『人と人を繋ぐ力、繋ぐ人が必要』と言っていました。私たちが言わんとする根本の部分を理解してくれたのではないかと思います。こういった気付きを得る学生が一人でも増えていってくれたらいいですね」(平田先生)。

お話をお伺いした人

西九州大学短期大学部 副学長 
地域生活支援学科 学科長
教授 平田 孝治さん(左)

西九州大学短期大学部
地域生活支援学科 多文化コース主任
准教授 福元 健志さん(右)