※インタビュー記事(聞き手:庄島瑞恵)
2050年カーボンニュートラル実現に向けてミッションを遂行中
佐賀市兵庫町に社屋を構える株式会社ミズマチは、農漁業や工業資材の卸販売を主とし、食品工業向けの生産ラインや省人・省力機器の設計・製造も手掛ける企業です。社会課題となっているゼロカーボンの実現に向けて「企業としてできることしたい」と専門家の力を借りて可視化を行い、着実に脱炭素化を推進しています。ここでは社内でこれまでに取り組んできた事例をご紹介します。専務取締役 総務部部長の水町幸治さんに話をお伺いしました。
GXモデル企業に選出。消費エネルギーを算定し可視化することで課題を抽出

株式会社ミズマチは、昭和15年に工業資材関連を取り扱う「水町商会」として創業し、昭和47年に現在の場所に会社を新築移転して倉庫を構えました。時代の動きを読みながら成長を続け、令和7年3月で創業77周年を迎えます。世界中で環境問題が叫ばれるようになって、自分たちでもできることをやっていこうという意識に立ち、平成19年にエコアクション21を取得しています。 同社は佐賀県の「GXモデル企業」に選ばれ、専門家のアドバイスを仰ぎながら社内のカーボンニュートラル化を推し進めています。この事業でまず実践したのは、現在の事業活動で消費するエネルギーを全て算定することでした。
「算定してみると、年間126tのCO2を出していることが分かりました。弊社はメーカーでも工場でもないので、社内でのCO2排出量よりも配送などで使用する車のガソリン関係で92tも排出していることも見えてきました。そこで、この92tと電気関係の34tをどうやって減らしていくかということについて、専門家と一緒に解決に向けて動いています。」(水町さん) これに並走して事務所の改装工事も行い、少しでも熱効率を高くし電気代の削減を目指しています。「窓を二重窓にするとか古い型式のエアコンを撤去して回収して、断熱性アップを目指しています。ガソリン使用の削減については、市内を走っている社用車のうち2台を電気自動車に変更する計画を立てています。業務に使えるような国産車が出てくることを期待しています。」(水町さん)
自社倉庫を改装しCO2削減を実現
社員の環境問題への意識を高めていくことに努めてきた同社は、ごみのリサイクルに関しては、細かく分別して産廃業者に出しています。
また、自社倉庫にも着目し、屋根の上に太陽光パネルを設置したり、天井が高く熱効率が悪かった倉庫内にパネル工事を施し、室内温度の抑制化を図りました。一見、体育館のようにポーンと広い倉庫にパネルで仕切りを設けたことにより、外気の温度に影響を受けにくく、夏は涼しく、冬は温かくなり、空調設備の使用減少に繋がりました。パネルの使用で低くなった天井にはLEDを採用し、電気代の節約にもなりました。これまで、倉庫作業中はシャッターを上げたままで行うことも多かったのですが、高速自動シャッターを導入したことで、外気温による影響を受けにくくなりました。
「事業の特性上、生産効率を上げようということではないので、うちでできることを少しずつ見つけ出しながら実践しているという感じです。現在、太陽光パネルを50キロ載せていますが、もし効率よく運用できなかったらJクレジット(※) についても検討しているところです。」(水町さん)
倉庫の改装を検討している企業にとっては、この施行例は参考になりそうです。
(※) Jクレジット制度:省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度


社内フードバンクも実施。楽しみながらエコ活動を推進。
令和5年に社内でフードバンクを初めて実施。各家庭で余っているもの、食べないものを会社に持ち寄って商品を集めました。その結果、食器や雑貨など食品以外のものも集まり、ちょっとしたイベントのようになったそうです。「うちは30人くらいの会社なので、そんなに大量には集まりませんが、集まった商品のリストを作り、希望者の名前を記入するやり方で進めました。この時のルールは『見返りを求めないこと』。商品を譲ってくれた人に特にお返しする必要はありません。お礼くらいは言いますけどね。持ってこなかった人が嫌な気持ちにならないようにしないと続きません。」(水町さん)
継続の秘訣は、余ったものを無駄にしないようにしようというボランティア精神。年に2回くらいの目安で開催している社内フードバンクは、社員さんの意識向上にもつながっているようです。

ゼロカーボン推進の社内委員会を発足。令和7年2月に実践策を発表
ゼロカーボンへの取り組みに終わりはありません。GX推進を指揮する水町さんは、こうした取り組みを社員全員に周知していく必要があると考え、社内メンバーによる委員会を発足させています。
「事前のデータなどを集めながらメンバーにゼロカーボンについて周知をしているところです。委員会の話の中で目標をつくり、2月に全社員に向けて実践のお願いをする予定です。」(水町さん)
未来へ向けた目標の一つに、自社だけでなく他社の省エネ化のサポートも掲げています。これまで同社で実践、解決してきた取り組みを省エネ化に取り組みたい取引先に共有して2030年問題、2050年問題を企業のビジョンに合わせながら解決することも視野に入れているそうです。
「2030年、2050年問題の数値目標に合わせて世界が動いています。大企業は先に先にと進めているでしょうが中小企業はコスト的なことも含めてまだ実践できていない状況です。それでも、私たちが実践してきたことをお伝えして、企業さんの設備関係の改善などに繋いで行けたらと考えています。」(水町さん)
2050年にはカーボンニュートラル実現へ
同社は、2030年度までに126tのCO2を42%削減、2050年にはカーボンニュートラル達成という目標を掲げています。社内で細かいところまで省エネできるところを探して、エコ実践をしてきた足跡は確実に未来へ繋がっています。「私たちは2050年までには達成可能だと思っています。太陽光発電の自家消費、社用車の課題解決を進めることで達成するイメージは見えています。」(水町さん)。
環境問題に企業として真剣に向き合い、一つ一つ実践してきたことが、企業にとっては成長を促す強みになっているようです。同社では、脱炭素に繋がる製品の提案など、省エネ化に寄与できるサービスを強化しながら、社会全体のゼロカーボン推進をサポートしていきます。
DATA
【株式会社ミズマチにおける取り組み内容】
- 令和19年 エコアクション21取得
- 令和24年 中小企業版SBT認証
- 再生可能エネルギーの利用
自社倉庫の屋根上に太陽光パネルを設置
本社・ビルのLED電気採用 - 倉庫内パネル工事による室内温度抑制
- ゴミの分別回収の徹底
- 営業車のエコドライブの指導と周知
- クールビズ・ウォームビスの実施
- 「SDGsを考える会」の発足
- 社内フードバンクによる食品ロス削減